「うちもそろそろ、人事制度をきちんと見直した方がいいかな。」
こういった声は、経営者の方々からよく聞くお話のひとつです。
「なぜですか?」と伺うと、
「いやぁ、何だか社員がさ、うちの人事の仕組みに不満みたいでさ」
「うちも人数規模的に、そろそろきちんとした人事制度を入れないとね」
等々、さまざまな思いをお持ちの様子が垣間見えます。
特に、何か人事の問題を抱えている経営者にしてみると、
「人事制度をきちっと整えたら、問題が解決する」と思うことも多いようで、
これは、人事制度という分かりやすい「形」の存在も、影響してそうです。
本当でしょうか?
人事制度を、外部の力を借りて設計・導入を行った瞬間の満足度は高いのですが、
数年経過した段階で、冷静に振り返ってみると、結局、会社は何も変わっていない、
という話は、正直、聞き飽きてしまうほど、よくある話です。
一体、なぜでしょうか?
よくある理由は3つです。
1つ目は「表面的なモグラたたき」
顕在化した問題をつぶすことに夢中になって、その根本原因をたどることなく、
人事制度で解決・完結できると夢見てしまうケース。
2つ目は「仏作って魂入れず」
人事制度という「形」に満足し、本来、人事制度を通じて実現したかったこと、
目的を忘れてしまい、いつしか手段が目的化してしまったケース。
3つ目は「借り物のヒトゴト」
外部の専門家が作ったもので、自分たちのモノ、心の叫びではない、
だから適当に運用しておけ、という面従腹背ケース。
信じられない話ですが、これは一流と呼ばれる大企業でも、本当によくある話です。
では、何をすればいいのでしょうか?
人事制度の最終目的は、その運用を通じて、
「人と組織の意識と行動」を変え、より成果を出せるようにすることです。
ただし「人と組織の意識と行動」は、人事制度だけでなく、
組織構造、組織運営ルール、コミュニケーション、人材育成、等々の
さまざまな要素の影響を、大きく受けています。
それら、ひとつひとつの要素に横串を通して、包括的に捉え、
人事制度も、数ある要素と強く連動したパーツ、と位置付けて見直すことが、
人事制度を整えて効果を出すための、最大のカギになります。
経営者として実現したい組織づくりの中で、人事制度は何の役割を果たすのか、
そして、目的達成のためには、人事制度以外に何が必要なのか?
人事制度という部分的な手段にとらわれず、常に一歩引いて大局観を持ち、
人と組織を本当に思い通りの状態に向かわせていく、
そういった志の高い会社が、日本に1社でも増えることを願っています。
あなたの会社の人事制度は、経営者のビジョンの実現を強力に支えていますか?
文責:蛯原 淳(えびはら じゅん)
コメント
COMMENT