経営者の覚悟のレベルが、社員の行動レベルを決める

 

「成長しなければ、死んだも同然です!」
ユニクロのトップが私たち社員に対して、激を飛ばしていた、20年前の一コマです。

言われた社員の大多数は「えっ!?」と思いながらも、
トップ自らの、成長へのあくなき執着と行動を実際に目にしながら、
意外と?すんなりと受け入れられていました。

「成長より安定が大事」という「多様性」を尊重する昨今の風潮では、
多少の受け止め方の違いはあれど、ここには経営者としての本質的な姿勢と、
組織統率への大きな示唆が含まれています。

 

「事業の成長」が絶対的使命の創業者

事業を立ち上げた経営者にとって、成長が止まってしまう恐怖と戦った経験は、
一度や二度ではないでしょう。

売上が伸びない、利益が伸びない、取引先への支払い、従業員の給与、等々、
どこかひとつでも流れが止まって、停滞から崩壊につながってしまわないか、
時には胃が痛くなったり、夜も眠れない・・等々。

それゆえに「絶対に成長させる」という執念は、成長ビジョンの持ち方、
経営上の意思決定の速さ、痛みを伴う選択の断行、自ら先頭に立って動かす、
といった、さまざまな場面での行動に現れてきます。

そして、その姿を見た、触れた社員から見ても、
経営者としての本気度、その根底にある覚悟を、必然的に感じ取っていきます。

そして、「そこまで覚悟しているなら」という「謎の空気」も発生して、
社員たちの心にも響き、いつしか社員の行動のレベルが上がってくるものです。

冒頭のユニクロもその典型例で、外部から来た優秀な経営者人材も、
大義と覚悟を示すトップの求心力には遠く及ばない、という状況でした。

 

「事業の維持」で十分と考える後継者?

一方で、創業者から事業を継承した二代目以降の後継者にとっては、
前提条件が大きく違う場所からのスタートになりがちです。

もちろん、一言で「維持」と言っても、それ自体が大変な価値を持ちますし、
200年続く伝統的企業などは、その典型かもしれません。

問題は、「維持」するにあたって、どれだけの使命感と覚悟を持って、
組織の社員をリードしようとしているか、にあります。

この時「自分のための」覚悟では、社員には全く届きません。
また中には「とにかく維持さえできれば何でもいい」という例もあります。

判断の先送り、妥協の連続、例外的な運用の増加、等により、
組織運営のレベルが下がると、社員の判断・行動レベルも下がってしまう。

社員としては、使命感や覚悟の持ちようがないので、
「日々淡々と過ごす」組織になり、成長は遠のいてしまいます。

大企業のサラリーマン経営者には珍しくない現象ですし、
政治の世界でも「首相/党首になるのが目標」というタイプだと同様でしょう。

 

「大義」が社員を動かし、「覚悟」が社員の行動レベルを決める

同じような商売や市場、似たレベルの社員の資質、大差ない経営資源であっても、
会社の成長は、経営者のビジョン/大義と、使命感/覚悟のレベルによって、
社員の行動、組織の能力、事業の成長性は、大きく変わってきます。

なぜならば、人は理屈では動かないけど、感情では動くからです。

知的レベルの高い経営者が、論理的に美しいことを言っても、社員は動かない。

しかし、心からの大義と覚悟を示した経営者には、社員は共感し、行動する。

「なぜ私たちはこの事業を成長させるのか」
「社会にどんな意味があるのか」
「目的達成のために、私は何を犠牲にしているのか」
等々、十人十色です。

そういった姿勢から、社員は動き、組織は強くなり、
おのずと事業の成長の果実がたわわに実り、将来の展望も開けてきます。

 

あなたの経営者としての覚悟は、社員に浸透していますか?

 

(文責:蛯原 淳)

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