夏場に塩アメを配って嫌われた幹部

残暑厳しく、35度超が当たり前になった日々が続く中、
職場による暑熱対策の深刻さは、各社各様に頭を悩ませているかと思います。

特に、環境を選べない建設現場や、大型の製造業をはじめ、
社員が働く環境の悪化に悩む経営者にとっては、
夏場の天気予報は、もはや「無難な会話」とは言えないようです。

 

暑さのせいで儲からなくなる・・

会社としてはいつも通りにやってるのに、生産性が劇的に落ちてしまう、
経営者にとっては、苦悩以外の何物でもありません。

しかも、社員からは不平不満があがり、暑熱対策として、
新たな設備投資や機材購入を余儀なくされるコスト増や、
工程を見直してのスケジュール延長等々、良い話はほとんど聞きません。

猛暑を前提に、業務や環境を刷新するハードルが、思いのほか高いのは、
これまで積み上げてきたコスト改善の成果を手放してしまうようで、
悩ましい問題ですが、もはや避けては通れない道になりつつあり、
これを機に、大幅なプロセス変更や自動化に着手する経営者も見られます。

 

カイゼン活動の限界・・

つい先日、幕を閉じた高校野球でも、クーリングタイムの設定、水分塩分補給、
ノックの短縮、朝夕の2部制導入、等々が見られました。

根本的な解決というよりは、小さな改善の積み重ねで何とか乗り切らせる、
という、大人の都合が目立つ対策でした。

高校球児は「甲子園で野球がやりたい」という人生の晴れ舞台のために、
その場限りのガマンは、わりと容易に受け入れられるのでしょう。

しかし、これが毎日の仕事となると、どうでしょうか。

 

塩アメを配って嫌われた幹部

その時、ある工場の幹部がやったことは、休憩所の入り口に段ボールを置いて、
その箱に入った塩アメの大袋を取り出し、テーブルの上に置いておく、でした。

そして休憩所のドアの横に、各自、塩分補給をするよう、A4の紙が張られていました。

皆さんが社員だったら、どのように感じますか?

 

多くの社員の受け止めは、ただ「モノだけが流れてきた」ことへの違和感でした。
何のメッセージも労いもなく、ただモノだけ、というコミュニケーション。

「オレらが壊れないように、気を遣ってるポーズ、幹部の自己保身か」
「なんかお手軽に、やってるフリだけしやがって」

もともと人望のある幹部ではありませんでしたが、この出来事で、
猛暑の中、冷ややかなスキマ風が吹き、組織運営上、大きなマイナスでした。

 

「スポットクーラー、せめて扇風機と冷凍庫が欲しい、なのにアメでケチりやがって」
という声もあったでしょうが、社員の心に残ったのは、
「ケチ」への不満よりも、もっと根深い不満でした。

 

社員が見ていたのは、会社の姿勢

猛暑の中で働く社員たちは「自分は〇〇を犠牲にしている」と感じています。
それに対して「会社は自分たちのために何を犠牲にしてくれたか」を見ています。

それが、暑熱対策に費やすコストなのか、勤務時間の調整なのか、
生産数量の抑制なのか、スケジュールの見直しなのか、
日々の努力に対する認知と感謝なのか、等々、いろいろありますが、
そういった経営者の判断と行動が、社員からはキッチリと評価されています。

 

制御できない変化への適応力

思えば、数年前のコロナ対策でも、似たような状況が全国で見られました。

生産や物流、プロジェクトを止めたくない経営者と、
満員電車での感染リスクを避けたい社員との間の葛藤は、
少し形を変えながら、今でも社内で論争になっている会社も見られます。

 

気候変動のように、経営者にとっては「自分のせいではない」問題に対して、
会社の業務のあり方を見直し、変化への適応力を高めるのと同様に、
経営者が、社員をどのように扱って、組織としての一体感を築いていくのか?

ある意味、経営者としての腕の見せ所とも言えます。
そして、社員は経営者の言動を、本当によく見ています。

 

酷暑の中、皆様の会社に「将来に向けた進化」があったことを願うばかりです。

 

文責:蛯原 淳(えびはら じゅん)

関連記事

RELATED POST

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP
MENU
お問合せ

TEL: 03-6403-0279

(月 - 金 9:00 - 18:00)カスタマーサポート